トランプ氏は30日午後、韓国側から軍事境界線をまたいで、現職の米大統領として初めて北朝鮮の地に足を踏み入れた。軍事境界線は朝鮮戦争が休戦した1953年から存在している。 トランプ氏によると、境界線を挟んだ状態で自分から金氏に、「私に線を越えてもらいたいですか?」と問いかけ、それを受けて金氏が米大統領を北朝鮮側に招き入れたという。 スーツ姿で歩いて越境 過去の米大統領の中に、この境界線付近まで足を運び、韓国への支援を示してきた人は何人もいる。例えばバラク・オバマ氏は、軍用ジャンパーを着て境界線近くを訪れ、双眼鏡をのぞいて現地を視察した。 平壌を訪れた人もいる。ジミー・カーター氏とビル・クリントン氏はともに、航空機で北朝鮮の首都を訪問した。ただ両者とも、大統領を退任した後のことだった。 現職の米大統領がスーツ姿で歩いて北朝鮮に入るというのは、まったく異例なことだった。 北朝鮮、韓国、アメリカの首脳が一堂に会するのは初めて(30日、板門店) いくら仲よしでも わずか1年ちょっとで3回目となったこの日の米朝会談については、「政治劇」に過ぎないとの見方が出ている。北朝鮮は核兵器削減に真剣に取り組む姿勢を示す必要があるとの指摘だ。 韓国・釜山大学のロバート・ケリー教授(政治学)は、「トランプ氏がまた、でたらめをうまく見せているだけ。トランプ氏と仲がいいからと、金氏がミサイル弾頭を1つでも放棄するなんて、誰が信じるだろうか?」と話す。 北朝鮮当局ともみ合いに トランプ氏側近、3回目の米朝首脳会談で 一方、米国家安全保障会議の元補佐官で、朝鮮問題を担当していたスー・ミー・テリー氏は、首脳会談は米朝関係の前進となり得ると分析。そのためには、トランプ氏が北朝鮮に対し核関連施設の完全廃棄を求め続けるのではなく、部分的な廃棄を評価することが条件だとする。 ローマ法王もコメント テリー氏は米紙ニューヨーク・タイムズに、「金氏はトランプ氏と暫定的な合意を結び、経済制裁をいくらかでも緩和させるため、寧辺(ヨンビョン)核施設と、核開発をしている疑いがある別の施設を、協議の対象として提案するかもしれない」と述べた。 ローマ法王フランシスコ1世は、「出会いを大切にする文化の好例だ」と首脳会談を称賛した。 <解説>テレビ向けの瞬間、だが何のため?――ニック・ブライアント、北米担当編集委員 ドナルド・トランプ氏はかつてホワイトハウスのウェスト・ウィング(執務棟)スタッフに、毎日をリアリティー番組のエピソードのように扱うよう指示したことがある。しかし大統領は、自分の政権運営の振り付けは自己流を好んでいる。金氏との会談はいかにも典型的なトランプ流演出だった。G20の場から早朝にいきなりツイートした外交特番が、普通なら準備に何カ月もかかるような会談の実現に至ったのだ。 非武装地帯という舞台設定は、めったにないほど意味深いものだった。そしてトランプ氏は大いに喜んで、就任以来かつてないほど「テレビ向け」と言える場面のひとつを演じて見せた。北緯38度の軍事境界線を歩いて越え、長年の敵地に足を踏み入れるという、どの現職米大統領もしたことがなかったことを実現したのだ。 確かに、見る者を釘付けにする光景だった。しかし、何のためだったのか? トランプ氏の型破りの外交が朝鮮半島の緊張を減らしたのは間違いないが、北朝鮮の核開発を止めるには至っていない。...
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